経歴
高橋恒一(たかはし こういち、1974年 - )は、日本の研究者・起業家・作曲家。専門はAI駆動科学、汎用人工知能(AGI)、計算システム生物学。理化学研究所 科学研究基盤モデル開発プログラム(AGIS)共通基盤開発・整備プロジェクト プロジェクトディレクター、同研究所 生命機能科学研究センター チームディレクター。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授。一般社団法人AIアライメントネットワーク(ALIGN)代表理事。
1974年秋田市に生まれる。4歳からピアノを、7歳からプログラミングをはじめた。
1994年に慶應義塾大学環境情報学部に入学し、1年生から岩竹徹研究室でコンピュータ音楽を学んだ。3年生からは冨田勝研究室に所属し、1996年に世界初の全細胞シミュレータ「E-Cell System」を開発した。E-Cellを用いたThe Institute for Genomic Research(TIGR、現J. Craig Venter Institute)との国際共同研究では、世界で初めて全細胞規模の仮想細胞モデルの構築に成功し、1999年に発表した。その後同大学院政策・メディア研究科に進み、2004年に博士(学術)学位を取得。2005年、日本人として初めてヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)の学際フェロー(Cross-Disciplinary Fellow)に採択され、米国分子科学研究所(カリフォルニア州バークレー市)に留学。オランダ原子分子物理学研究所(AMOLF)のten Wolde教授らと共同で1分子粒度の正確な反応拡散シミュレーション手法である改良グリーン関数反応動力学法(eGFRD法)を開発し、2010年にこれを用いて細胞内シグナル伝達における分子の時空間相関の効果を示した。
2009年より理化学研究所で研究室を主宰し、2011年からはスーパーコンピュータ「京」を使った細胞シミュレーション研究に参画した。2016年からはスーパーコンピュータ「富岳」(当時の開発名称はポスト「京」)向けの脳型人工知能用計算基盤の開発を、国家プロジェクトの課題責任者として主導した。その一方、2010年代半ばからは、実験の自動化とAIを組み合わせて科学的発見の過程そのものを機械化する「AI駆動科学」を提唱し、分野の創成に尽力した。2018年度からはJST未来社会創造事業「ロボティックバイオロジーによる生命科学の加速」の研究開発代表者として自律実験システムの研究開発を2024年度まで率い、眼科医の高橋政代らと共同でiPS細胞を眼科治療に使う網膜色素上皮細胞に分化誘導する至適条件を自律的に発見するAIロボットシステムの開発(2022年発表)などを行なった。2024年、理化学研究所の科学研究基盤モデル開発プログラム(AGIS)で、科学研究のための基盤モデルと実験自動化技術の開発を行う共通基盤開発・整備プロジェクトのプロジェクトディレクターに就任した。
基礎研究だけでなく、研究スタートアップへの関与や社会起業などを通じた社会連携や産業育成にも取り組んでいる。2015年、ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社(RBI)の最高情報責任者(CIO)としてヒト型実験自動化ロボットLabDroid まほろの実用化に関わった。また、2018年に研究自動化AIを開発するエピストラ株式会社を共同創業し、2020年からは創薬AIの株式会社MOLCUREの経営顧問を務める。並行して、2015年にAI社会論研究会(2026年よりAGI社会論研究会に改名)の共同発起人となるなど、AIが社会に与える影響をめぐる議論にも早くから加わってきた。
科学と社会の間をつなぐ社会起業活動にも取り組んでいる。2015年から特定非営利活動法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)の理事・副代表、2023年にAIのリスクとガバナンスに取り組む一般社団法人AIアライメントネットワーク(ALIGN)の代表理事、2025年からはAIとロボットによる科学研究の自動化に取り組む一般社団法人AIロボット駆動科学イニシアティブ(AIRDS)の代表理事などを務めている(いずれも共同設立者)。2025年には、ALIGNを通じてフロンティアAIの学習基盤を国家インフラとして整備する政策提言「日本AGI基盤(NAGI)構想」の第一版を策定し、翌年に一般公開した。
2026年8月10日、著書『AGI―人間を超える知能は文明をいかに変容させるか』(講談社選書メチエ)を刊行。
2025年8月、音楽プロジェクト「Conchordal」を立ち上げ、主宰している。
年表
各項目の年は就任・開始の年。同一機関内での異動や、その後の中断・退任は省略しています。
| 1993 | 秋田県立秋田南高等学校 卒業 |
|---|---|
| 1996 | 世界初の全細胞シミュレータ「E-Cell System」の初版を実装(学部3年、冨田勝研究室) 1996年12月に最初の内部向けバージョンを公開。 |
| 1998 | 慶應義塾大学 環境情報学部 卒業 |
| 2003 | 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 博士課程 単位取得退学 |
| 2004 | 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 博士(学術) 博士論文「Multi-algorithm, multi-timescale cell simulation」。 |
| 2005–2008 | 米国分子科学研究所 研究員 ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)学際フェロー。 |
| 2009 | 理化学研究所 基幹研究所 チームリーダー |
| 2010–2018 | 理化学研究所 生命システム研究センター チームリーダー |
| 2010 | 改良グリーン関数反応動力学法(eGFRD法)による細胞内シグナル伝達の解析を発表 |
| 2011–2015 | HPCI戦略プログラム分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」サブテーマ責任者 |
| 2015–2018 | ロボティック・バイオロジー・インスティチュート株式会社 最高情報責任者(CIO) |
| 2015 | 特定非営利活動法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI) 理事・副代表 |
| 2015 | AI社会論研究会 共同発起人 |
| 2016–2019 | ポスト「京」萌芽的課題「思考を実現する神経回路機構の解明と人工知能への応用」サブ課題代表者 ポスト「京」は現在のスーパーコンピュータ「富岳」の開発名称。 |
| 2018 | 理化学研究所 生命機能科学研究センター チームディレクター 就任時の呼称はチームリーダー。 |
| 2018 | 大阪大学大学院 生命機能研究科 招聘教授 |
| 2018 | 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 |
| 2018 | Epistra株式会社 共同創業者 |
| 2018–2025 | JST未来社会創造事業「ロボティックバイオロジーによる生命科学の加速」 研究開発代表者 |
| 2020 | 株式会社molcure 経営顧問 |
| 2023 | 一般社団法人AIアライメント・ネットワーク(ALIGN) 共同設立・代表理事 |
| 2024 | 大阪大学大学院 医学系研究科 システム生物学講座 招聘教授 |
| 2024 | 理化学研究所 科学研究基盤モデル開発プログラム(AGIS)共通基盤開発・整備プロジェクト プロジェクトディレクター |
| 2025 | 一般社団法人AIロボット駆動科学イニシアティブ(AIRDS) 代表理事 |
| 2025 | 音楽プロジェクト「Conchordal」 主宰 2025年8月開始。 |
| 2025 | 日本AGI基盤(NAGI)構想 策定(AIアライメント・ネットワーク) 第一版を2025年に策定、2026年に一般公開。 |
| 2026 | AGI社会論研究会 AI社会論研究会から改称 |
| 2026-08 | 著書『AGI―人間を超える知能は文明をいかに変容させるか』(講談社選書メチエ)刊行 |
正式表記は「髙橋恒一」(「髙」ははしごだか)だが、オンラインでは高橋を常用している。
職歴・学歴の完全なリストは researchmap、論文は Google Scholar を参照してください。
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